これからのWeb広告はGoogle(無料型)からWikipedia(寄付型)へと変わっていく
GoogleとFacebookの例
ここ数年で、コンテンツは、Webでタダで消費するものという考え方が定着してきているように思います。
それは、今まで、紙媒体のものは、配布するためのコストがかかっていたのが、デジタル媒体は、限界費用がゼロに近づいていき、一度にデジタルコンテンツを複数の人に届けることが可能になったからだと思います。
しかし、コンテンツ配布の敷居が下がったことで、副作用として、膨大な配信元を精査できず、フェイクニュースや、デマ記事が拡散されるという問題が発生しています。
そして、ユーザーは、無料でコンテンツを楽しむことが出来るようになりましたが、実はその裏側では、ユーザーの嗜好性を分析して、広告主に販売しているビジネスモデルにも問題があったことが分かってきています。
すなわち、ユーザーは、個人情報を売ってコンテンツを楽しんでいるので、実質無料ではなく、ユーザー自身が商品であるのです。
確かに、ユーザーの嗜好性の扱いについては、デリケートです。しかし、効果的に運用されれば、見たくない広告は排除されて、必要な広告が表示されるという、ユーザーと広告主に双方にとってWin-Winな関係性を構築することも理想的には可能です。
その先には、Amazonのアレクサのように、音声アシスタントによる秘書のような役割がAIによって実現してくるかもしれません。
自動で必要な広告を知らせてくれたり、買い物まで、自動化されていくかもしれません。
これは、コンピューターに個人情報を引き渡すことで便利になる反面、一種の気持ち悪さというか、何者かにコントロールされているのではという感覚にも結びついていく恐怖心すら感じることですが、個人情報の管理の方法をユーザーに正しく説明できれば、その感情を乗り越えていけるかもしれません。
その一方で、個人的には、Webで誰でも無料で読めるコンテンツは、たいして価値がないのではないかと思えることがあります。
むしろ、Webで拡散されるコンテンツの種類は、雑談のような企業と個人とを繋ぐコミュニケーションを主体とした種類が正解なのではないかと感じている部分もあります。
だからこそ、本や新聞、デジタルコンテンツの課金、有料記事のようにお金を払って有益な情報を効率的に収集したいというニーズは今後も存在すると思います。
無料で、コンテンツを消費できるようになっても、本当に価値のある情報がWeb上に配布されているとは限らず、無数の情報の中から探し出すコストは年々高まっているのです。
逆説的ですが、お金を払ってコンテンツを消費するコスト>無料で有益な情報を探し出すコストが、再度逆転してきているように感じています。
Braveの例
しかし、Webのマネタイズについては、まだまだ正解は見つかっておらず、試行錯誤の段階だと思います。
先日、ウォール・ストリートジャーナルという日本の日経新聞にあたる存在の経済史のグループ会社が、BraveというWebブラウザ経由で、課金できるサービスと提携したというニュースがありました。
米国の新聞社は、紙媒体からWeb媒体へ切り替える時期は早かったのですが、成功例としては、広告と課金コンテンツとを組み合わせたペイウォールという手法が一般的になりつつあります。
しかし、このやり方も限界が見え始めていて、クリックされない広告と課金されることに抵抗を感じるユーザーという2つの問題に悩まされています。
そこで、Braveを使って、Webの滞在時間を元にして課金していく方法がテストされようとしています。
このやり方では、お試し感覚で気軽に、少額課金でコンテンツを消費しながら、真に有益な情報については、正しく評価されるのではないかという実験的な試しみになります。
これは、仮想通貨でしか実現し得ないマイクロペイメントという支払い方法が活用されています。
この新しい課金方式が実現すると、ウェブ広告のあり方を大きく変える可能性があります。Googleのアドセンス広告が主流の中、マイクロペイメント形式の広告課金に変わることで、出稿する出版元の意識もPVではなく、滞在時間という軸で有益なコンテンツを制作する意識に変わってくるのではないかと思います。
Wikipediaの例
Braveは言うならば、寄付に近い課金のあり方で、これは性善説に基づいています。
しかし、すでに、Wikipediaはこのあり方を実現させています。
これは、多くの無料で読むユーザーの中に、課金しても良いというユーザー、サービスを支える一部のパトロンの役割をするユーザーが存在することで成り立つサービスです。
ある意味、宣伝して普及させる役とパトロン役との役割がはっきりしているサービスが上手くいくという典型的な成功のモデルだと思います。
鍵となる寄付の概念
すなわち、これから鍵になるのは、ユーザーの消費体験の変化にあると思います。
寄付という仕組みをどう感じるのか?という点にかかっていると感じています。
つまり、寄付は、ユーザーの財産をマイナスにするだけのものと捉えられるのではなく、社会やサービスに貢献することで、一種の満足感を得ることが出来て、それ自体が、消費行動化するという未来です。
例えば、クラウドファウンディングという仕組みは、プロダクトの資金援助という寄付行為です。見返りとして一般より早く、その商品を手に取ることができるという利点がありますが、それよりも、間接的に商品開発に関わることができるという喜びが価値になっていると思います。
サービスがリリースされた時に、あの商品は自分が関わったと感じられる価値は、物を買うことで得る消費体験とは違った、新しい形の体験型消費と言えるのではないでしょうか。
結論
Web上の無料のコンテンツを支える広告モデルと、効率的に情報を収集できる有料のコンテンツ課金モデルとは、共存できる関係にあると思います。
それぞれ目指している方向は違いますし、無料で消費するコンテンツの中にも、ビッグデータ化することで社会に新しい価値を生むことが出来る、素晴らしい試しみをしている最中であると思うからです。
とちらが、優れているモデルと言うよりも、それぞれの課金方法が細分化していくことで、ユーザーは自分の好みによってサービスを選択することができます。
おそらく、無用のコンテンツを消費しながら、有料のコンテンツにも課金するといったやり方が、今のあり方ではないでしょうか。
最終的には、コンテンツをどのような形で届けるのが最適なのかを、コンテンツの種類に合わせて配信していく最適化が進むことで、ユーザーが豊かなコンテンツ体験を得ることが出来ると思っています。
何れにしても、ユーザーの費用対効果の高い、効率化された課金のあり方が確立されていくことと思います。