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ミレニアル世代のビットコイン資産運用ブログ

「教養としてのテクノロジー AI、仮想通貨、ブロックチェーン 伊藤 穰一 (著)」

教養としてのテクノロジー―AI、仮想通貨、ブロックチェーン (NHK出版新書 545)

要約

  • これから益々AIが人間の労働を代替していく
  • ベーシックインカムが導入されるとお金のために働くことがなくなる
  • 仮想通貨は国家と対峙するもの、脱中央化である
  • 仮想通貨の規制は国ごとではなく、世界規模で公正な機関が担うべき
  • ブロックチェーンにより、国や企業に依存しない信用不在のシステムを構築することができる
  • 人間は労働から解放されることで、人生の意味をより一層考えるようになる
AIは労働をどう変えるのか?

AIが人間の仕事をどんどん奪っていくのではないかという議論がされています。今後急速なスピードで、単純労働や、知的労働でもルーティン化される仕事はロボットやAIにより自動化されていく未来が想定されてきています。

一例として、Googleは翻訳という仕事をAIが代わりに行なっています。YouTubeのリアルタイムで字幕を翻訳する機能は、精度こそ未熟なところはありますが、これから益々、実用化されていきます。

 

このように、AIが社会に進出することで、私たちは「働く」とは何かを考える必要に迫られてきています。

お金を得るための労働が働くという常識だったものが、その担い手がAIに変わることで、働くことの価値観が180度変わってきているように思います。

労働=お金という考え方だと、人間は生活や、お金のために働くということになってしまいます。

 

お金を軸に価値を変換して考えてしまうと、お金に換算できないボランティアや遊び、家事や子育てといった活動はどうなるのでしょうか?

逆に言えば、AIの登場で、経済効率や生産性だけではない価値の測り方が必要とされてくるはずです。

ベーシックインカム

新たな仕組みとして、ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)」という方法が考えられています。

ベーシックインカムはすべての国民に政府が生活費として一定額を支給する制度です。

もし社会にベーシックインカムが導入されれば、生活のために働く必要がなくなってきます。

これは、働くという意味を大きく変えるような制度です。

そうすれば、お金のような経済的な価値のためだけに働くことに疑問を持つ人はこれからもっと増えることになります。

 

つまり、お金のためだけに働くのではなく「ミーニング・オブ・ライフ(人生の意味)」が重要になってきます。

労働に人生の意味を考えるように、自分の生き方の価値を高めるためにどう働けばいいのかという新しい価値観への変化が起こります。

仮想通貨は国家をどう変えるのか?

ビットコインは、サトシ・ナカモトの論文でも、「必要なのは、信用ではなく暗号化された証明に基づく電子取引システム」であり「信用に依存しない電子取引システムの提案」とあります。

要するに「国家なんか信用するな」と言い換えることもできます。  

 

もともとビットコインが世界的に注目されたのは、2013年のキプロス金融危機です。キプロスをタックスヘイブン(租税回避地) として利用したロシアマネーが、大量にビットコインへ換金されましたところからです。

さらに同年、人民元に不安を感じた中国人富裕層がビットコインへ一斉に換金を始め、中国政府が金融機関によるビットコインの取り扱いの一切を禁止することを発表する事態となりました。

 

こうした事実からわかるのは、ビットコインが国家から資産を逃避させる手段として買われたところからスタートしているということです。その意味において、仮想通貨が「国家」と切っても切り離せない関係であることがよくわかります。

 

昨今の仮想通貨ブームでは、投機としての仮想通貨が盛り上がっていますが、リバタリアンという国家に依存しない自由主義たちの理想が根元にはあるのです。

ICO

ICOが急速に普及した理由は、その手軽さからです。ICOは、起業家や開発者が自分たちの提供する新しいサービスで使える「トークン(コイン)」を投資家に買ってもらい、その購入代金で資金調達する手法です。

2017年は仮想通貨の高騰と相まって、世界中の投資家から容易に資金を集めることができる状況が続きました。

 

しかし、問題はインチキなICOが規制のない環境で無尽蔵に増殖していったことです。

そこで、国ごとによる規制、SEC(証券取引委員会)などによるICOを規制する動きが出始めました。ただ、インターネットの自由な空間を特定の国家が規制することは望ましくありません。

ヒントとなるのは、インターネットにおける地球規模の調整機関となっている「 ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)」です。

非営利の民間団体である彼らは、インターネットのドメイン名、IPアドレスとポート番号の割り振りや割り当てを全世界的に行っています。

 

仮想通貨の世界においても、ICANNのような非中心的で非営利のガバナンス機関が1番適しているのではないでしょうか。

ブロックチェーンは資本主義をどう変えるのか?

仮想通貨を支える技術として、「ブロックチェーン」に注目が集まっています。

ブロックチェーンは仮想通貨の取引データを暗号化して、1つのブロックとして記録、管理する技術です。

取引データがネットワークに参加するコンピュータ上で分散的に管理されるため、インターネットの性質に似ています。日本語では「分散化」と表現されていますが、英語では〝decentralization(ディセントラリゼーション)〟であり、語義からすると「非中央集権化」「脱中心」といった意味になります。

 

情報を持つコンピュータが一か所に集中せず、複数のコンピュータにより共有される「P2P(ピア・トゥーピア)」であるため、セキュリティを確保することができ、かつ低コストでの運用が可能です。また記録のトレーサビリティが確保されており透明性が高く、暗号化により匿名性が担保されているため、所有権を明確にする必要がある「証券」や「通貨」など金融分野での活用が見込まれる新たなテクノロジーです。

 

ブロックチェーンという新たなテクノロジーを考えるための視点として、いちばん大切なのは、効率化によりコストが安くなることではなく、インターネットのように「ディセントラリゼーション」に向かうことです。

 

いままでは、プロの投資家が投資をして、銀行が企業にお金を貸し付けるといったように、金融は中心で幅を利かせる「仲介業者」のためにありました。しかし、ブロックチェーンの活用により、企業は投資家から直にお金を集められるようになるため、金融や経済がもっとP2Pになっていく可能性があるのです。

本当にお金は大切なのか?

いまがテクノロジーにより新たな通貨が生まれるタイミングであるため、お金について考えることがより大切になってきています。  すでにお金を持っている人たちについては、お金では買うことができない「ミーニング・オブ・ライフ(人生の意味)」をいま以上に考える必要が出てきました。

一方で、お金は持っていないけど、ある特定の価値観やコミュニティを持っている人については、どんな価値をお金に交換して生活していくかを真剣に検討しなければなりません。  ただし、ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンは、「お金によって得られる幸せは年収7万5000ドル(日本円で約850万) 程度までである」と述べています。

お金がないからといって、無限に稼ぐ必要があるかといえば、そうではありません。必要以上にお金を得たとしても幸せになれないのであれば、何のためにお金はあるのでしょうか。

人間はどう変わるのか?

 「フューチャリスト(未来志向者) ではなくナウイスト(現在志向者) になろう」というジョーイ(伊藤穰一) の提案が斬新です。「イノベーションは、いま身の回りで起きていることに心を開き注意を払うことから始まるのだから、フューチャリストであってはいけない。いまの出来事に集中するナウイストになるべきなのだ」という考え方です。

 

AIにより、世界中の知にアクセスできるようになってくると、「知恵」は、もはやお年寄りだけのものではありません。

変化に適応する柔軟性を持った知恵を子どもたちはたくさん持っています。私たちは、あらゆる多様性から学ぶべきなのです。

「大人と子どもがお互いから学ぶ」という価値観は、今後、ますます強くなっていくのではないでしょうか。

 

アメリカの人口の4分の1を占める「ミレニアルズ(Millennials)」は、2000年以降に成人となった1980~90 年代生まれの世代です。ある調査によれば、彼らの約9割は「CSR」、つまり「企業の社会的な責任」に基づいて、商品を購入します。また約7割は自身をソーシャルアクティビスト(社会的な活動家) と位置づけているそうです。

アメリカでは若い人たちが変わってきているようですが、日本もクラウドファウンディングや、仮想通貨などの新しいお金の使い方が若者を主導に変わってきているように感じます。

大きな価値観の変化は、世代によって自然と変わるもので、一人一人の考え方自体を変えることは難しいと思います。

次の時代を担う、ミレニアル世代の若者たちが新しいお金、労働、社会のあり方を創っていくものと思っています。

教養としてのテクノロジー―AI、仮想通貨、ブロックチェーン (NHK出版新書 545)

教養としてのテクノロジー―AI、仮想通貨、ブロックチェーン (NHK出版新書 545)